第6話



□■第6話■□

ギルバート達を見送った後、キラは自分の部屋へと戻り扉をパタンと閉め終わっ たと同時に全身の力が抜けその場に落ちるように膝をついた。

10分以上経つというのにまだドクンドクンと心臓が波打って鳴っている。
通信の間、声が耳に入る度に全神経が耳に集中していた。
驚きのあまり頭の中が真っ白になり、傍にいたはずのシンも目に入らなかった。

キラは先程の通信で、彼が自分の直ぐ傍にいるということを実感した。
一歩前へ出れば、彼の顔も声も交わすこともできたが、今の自分にはまだその勇 気がなかった。







シンは会議室の扉の前でその背後の会議室にいるギルバートを待っていた。
待っている間は何もすることもなくずっと立っているのでハッキリ言えば暇だ。

暇をしてると、キラのこと・・・胸のうちに閉まっておくと言っても中々言葉ど おりにはできなくて、 気になってずっとそのことばかりを頭の中で繰り返し考えていた。
そうして考えているうちにいつの間にか時は流れ会議は終わり、扉が開かれた。

と、ドアの方向へ目を向け議長を待っていると
今まで考えていた、最も気になっている人物が最初に出てきたことにシンは少し ムッとした。

シンはアスランをジッとみつめた。
シンの視線に元軍人のアスランにはすぐに視線に気付き、その方向を見るとデュ ランダル議長の護衛が?
と、疑問を頭に浮かべた。

デュランダル議長はまだ会議室の中におり、そして今は誰かと話しているようで しばらくはこちらに来ないようだ。
なら、シンと会話する時間ぐらいはあるだろう。アスランはシンへと向けて足を 運んだ。
アスランが自分の傍へ近づいてきたことにハッとし、シンは目を逸らした。
「・・・何か?」
「いえ、何でもありません」
主語のない言葉でも視線のことを言っているのだということはわかっていた。
シンは何か言いたげだったが、否定の言葉で2人の間に気まずい沈黙が流れた。

「・・・何もないのに、そんな目を向けないだろ?君は」
「どうせ目付きが悪いですよ、俺は」
「そういうことを言ってるんじゃなくて・・・!」
アスランはこれ以上言っても口論が続くだけだと判断して即座に口を止めた。
きっと彼はこういう言い方しかできないのだろう。彼と上手く会話できない事に 少し溜め息をついた。

「所で君は今朝、議長の自宅にいたが本当に何でもなかったんだな?」
「あなたには関係のないことです。議長の私信事でしたから」
ツンと鼻を尖らすような口調でシンは答えた。
「そうか・・」
シンは予想していた言葉とは正反対の答えに驚き、そして今の言葉はとても残念 そうに聞こえた。

「・・・?」

シンは溜め息交じりの答えにアスランが今朝のことを気にしているようにしか見 えなかった。
何故アスランがそのことを気にするのかわからない。
あのモニターの位置からは死角になっていたからキラの姿が見えるはずがない。

「あなたは・・・」
「すまない、待たせたね。」
シンが言いかけた時、会議室から出てきた議長が会話を打ち切るかのようにシン に声をかけた。
「いえ」
シンは慌てて、議長に向けて敬礼をする。

ヤバイ

まず頭に浮かんだのはその言葉だった。
議長はメディアでもよく見る通りに、いつものように微笑んではいるのだが目は 笑ってないのだ。
こんな議長を見るのも初めてで、いつもの自分に似合わずめずらしく背筋に嫌な 汗をかいた。

「それでは、失礼するよアスラン君」
「え、あ、はい・・」
今一瞬議長とシンの間に重い空気を感じ取ったアスランは戸惑って、 反応が少し遅れてしまい返事が曖昧になってしまったことを後悔した。
・・・相手が議長だからだ。

踵を返した議長はアスランとは反対方向へと足を進めていった。
その後を慌ててシンが追いかけて行った・・・


「君は態度も閉まっておかなければならないな。先程の態度は良いとはいえない よ。」
どうやら気付かないうちに見られていたようで言い訳もできなかった。
「すみません・・・」
その言葉を出すだけで精一杯だった。
そしてアスランのことも気になっていたが、先程のことは口には出さなかった。





コンコンッ

ギルバートは自宅へ帰宅すると、一直線にキラの部屋へと足を向けた。
部屋の前に着くと扉をノックを2回繰り返すが、中からは一言も返事がない。
返事がなければ少しの音さえ聞こえないのだ。

今日、外出するとは聞いてはいないし、第一外に出たいとキラは一言も言ったこ とがない。
抜けだすとは考えにくく・・・いや、今朝のことが関係あるとすればありえなく もないことだ。

そんなことを考えながらゆっくりと扉を開ける。

ゴンッ

「!?」
扉を開けると普段は聞くことがない音がする。・・・足元に視線を向けるとキラ がいたのだ。
そして自分が扉を開けてしまったことで、キラの後頭部に扉が直撃して今のよう な音が出たのだ。

寝ていたのか・・・
しかもこんな所で寝ているとは思ってもおらずに驚く。

「っぅ・・・」
キラが何かが後頭部を直撃し、痛みの声を少しあげて頭を抑える。
「すまないっ」
ギルバートは慌ててその場に座りこんだ。
他の者が今の彼の姿を見れば、まず驚くに違いないだろう。
いつも平静でメディアには明るく笑みを浮かべて、普段とは違い、まずこう慌て る姿を見るのはとても珍しいことだろう。

「す、すみませんっ!僕こんな所で寝ちゃって・・!!」
自分の居場所を見て意識が途切れた時のことを思い出した。
力が抜けていつの間にか眠ってしまっていたのだと気付き、そして目の前にいる ギルバートに目をぎょっとさせて慌てて向き直る。

「本当にすまない・・・。氷を持ってこよう・・・」
立ち上がろうとするギルバートの腕をキラはしっかりと掴んだ。
「大丈夫ですっ。こんな所で寝てる僕の方が悪いんですから」

"ゴン"と音がハッキリ聞こえるまでの音だ。タンコブが出来ていてもおかしくな いだろう。
それが平気なはずがない。
が、キラの眼差しにギルバートは観念しもう片方の手を伸ばした。

「まずは、ここから立とう。このままでは汚れてしまうからね。」
自分がずっと地べたに座りこんでいたためか服に皺がより、白いシャツが少し汚 れているのがわかった。
「ご、御免なさいっ」
手を借りたことと服を汚したことのどちらにも謝った。

「おかえりなさい。今日は、早いんですね。」
窓からは夕日が差し込んでおり、もう夕方なのだと、そんなに寝ていたのかと驚 いた。

微笑むキラにギルバートも"ただいま"という言葉と共に微笑み返した。
家には"おかえりなさい"と言う執事やメイドは大勢いるけれどそれは仕事であっ て、 そうではなく待っていてくれる人がいる。
こういう温かいものも、いいものだと内心で微笑んだ。

「今日の予定は会議のみだったからね。」
ギルバートの手を取り、キラは立ち上がる。

「あ・・・」
立ち上がる時のはずみでただ声を出したのかと思えば、何かを聞きげな声を出し たキラだがすぐさまその口を閉じた。 もちろんギルバートの耳にしっかり聞こえていた。

思い当たることは1つ。

「・・・彼が、気になるかね?」

キラが今思い浮かべたことを言い当てられ、ドキリとして体が少し揺れた。
気にならないと言えば嘘になる。けれど、他に言葉が見つからなかった。
ぐっ・・と言葉を詰まらせたキラをギルバートは見据えた。

「君はアスラン・ザラを・・・」

「違います!僕はっ」

その言葉にキラははっと驚き、いつの間にか反撃するように声をあげた。


「僕は・・・!」










□■あとがき■□
あ、、少し短いです・・・。御免なさい(汗) これ以上書けそうになかったん で・・・
6番手、三枝です。中途半端な所で終わらせてしまってすみません。
しかもこれじゃぁシンとアスランメインになってしまっているかのようにも・・・


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