第3話



□■第3話■□

ギルバートの家に泊まることが決まったキラは、早速彼自身に客室へと案内された。

案内された先は、キラにとっては客室とは考えられないような豪華な場所であった。

天蓋つきのベッド。大きな窓からは緑がよく見える。ちり一つない別途傍の机。思わず目を瞬かせてしまうくらいだ。

月にいた頃、確かにアスランの家は自分の家よりも大きかった。また、先の戦争でラクスの家に滞在していたときもその大きさに密かな感動を覚えていたこともあった。

しかし、ここは、その比ではない。ギルバートの書斎らしき部屋につれられて入ったときにも感じたが、今までで1番大きく、広いのだ。



「どうかしたのかね、キラ」



入り口のところで立ち止まっていたキラを、ギルバートが心配そうに見ていた。



「いえ、なんでもないです・・・」



俯きながら答え、キラは室内へと足を踏み入れた。そして、ギルバートの隣に立った。



「何か言いたいことがあるのならば、遠慮なく言ってくれ。我慢しなくてもいいんだ」



はっとして顔を上げ、ギルバートを見つめると、彼は穏やかな笑みを浮かべていた。そしてギルバートは安心させるように大きな手でキラの頭を撫でた。

その言葉が、その動作が、再びキラの心に入り込み、知らず知らずにキラは再び涙をこぼしていた。



「っく・・・・・・」

「さっきも言ったが、泣きたい時に泣けばいい。我慢は身体に毒だからな」

「・・っ・・・ギル、バート・・・さん」



涙で濡れたアメジストの瞳には今ギルバートしか映っていない。キラが涙しているというのにもかかわらず、ギルバートの心はその事実に歓喜を覚えていた。

形容しがたいその感情に、多少戸惑いを覚えつつも、ギルバートはキラを安心させる為にキラを再び抱きしめた。



「どんな些事でもいいから、私には全てを話してくれ」



自分の胸の中に顔をうずめるキラは、ギルバートの言葉に微かに、しかし何度も頷いた。

ギルバートはその返事に満足し、小刻みに震えるキラの体を優しく撫でた。

キラが、泣きつかれてギルバートの胸で眠りにつくまでずっと・・・・。

















翌朝。 陽の光が飛び込んできて、キラは緩やかな動作で起き上がった。

辺りを見回して、一瞬固まる。ここは一体どこなのだろうか、と。しかしすぐに昨日出会った―――相手に言わせれば再会したというのが正しいらしいが―――ギルバートの家に昨晩はお世話になったのだと思い出した。



何時の間に寝たのかさっぱり覚えていないが、キラは久しぶりに熟睡できた。

今ギルバートの家に、彼の家の客室にいるというのに、昨日の出来事が夢のように感じる。

自分の出生を知り、生みの母を知るあの人との邂逅が。

泣きたいときには泣きなさい、我慢することはない、と言ってくれたあの人の言葉が。



「夢・・・・じゃないんだよね」



夢であってほしくない、そう強く願うほど、キラにとって昨日の出来事は大きなことだった。







どれくらいの時間そうしていたのだろうか。ぼうっとベッドに座ったままであったキラの耳に扉を叩く音が飛び込んできたのは、キラが目覚めてしばらく経った頃だった。



「失礼するよ、キラ」

「ギルバート、さん・・・・・」



議長の服を身にまとい、ギルバートが入ってきた。しかし入ってきて早々彼の顔にかげりが出来る。



「・・・・・後で濡れたタオルを持ってこさせよう」

「えっ・・・・・」



言われて、そういえばいつもよりも目蓋が重い事に気が付いた。

いつの間にか寝たとしか記憶に残っていないキラは、自分が泣きながら眠りに付いたという事は勿論頭にはない。



「自分で鏡を見ていないのかね、キラ」

「・・・・そんなに酷いんですか?」

「私は酷いと思うよ、それは」



くすりと笑うギルバートに、キラは頬が熱くなるのを感じた。

恥ずかしいやら居た堪れなくなるやらで、上手く言葉が出てこない。



「すまないが、私はそろそろ家を出なくてはならないんだ」

「ぇ・・・・・ぁ、じゃあ僕」

「キラはまだゆっくりしていたまえ。出て行く必要はないんだ」

「・・・・・・・・・・」

「ずっとここにいてくれて構わない。私は歓迎するよ」



その言葉に、キラは瞠目した。

確かにギルバートは昔キラが幼い頃あったことがあると言った。実母、ヴィアと親しいとも言った。しかし、それだけだ。キラ自身は彼とそれだけの接点しかない。

今はもう会うつもりの無いアスランは、幼馴染、そして親友と言う繋がりがある。

オーブにいるカガリも、先の戦争で知ったことではあるが、血という切っても切れない繋がりがある。

だが、目の前のギルバートには、何もないのだ。



「私はキラにこの家にいて欲しいと思う。これが私の本心だ。ヴィアや出生のことなど関係の無い、ね」

「・・・・・・・僕、は・・・・・」



僕は一体どうしたいのだろう。

ぐるぐると、それだけがキラの中でめぐる。



戦争が終結して、自分は逃げるようにそこから去った。

誰にも、何も告げずに。

あの時知った、自分の出生の秘密や、カガリとの関係、様々なことが終結と共にキラを襲ったのだ。

誰かに言いたい、しかし言えない。そんな葛藤を抱いた。そして、気付けば共に戦った仲間の許から去っていた。



「そう悩むことはない。キラがいたいと、少しでも思ってくれるのであればここにいてくれ。しかしそうでないのならばキラが望む所へ行くといい」

「僕が・・・・・望む所・・・・?」

「そうだ。そここそが、君が居るべき場所なのだよ」

「・・・居場所・・・・」



問いかけるような眼差しを送ると、ギルバートは力強く頷いた。

全てを認めるように、許すように。

キラは、俯き、自分に問うた。今、自身が望む場所を。いたいと思う場所を。



「僕は・・・・・」



俯くのをやめ真っ直ぐと、ギルバートを見た。

いたいと、傍にいたいと自分が望む場所。それは・・・・。



「ここにいても、いいですか?」

「ああ、心から歓迎するよ」



自ずと口元が綻んだ。自分の選択が間違っていなかったと、心の底から安堵する。



「詳しい話はまた後でもいいかな?」

「ぁ、はい・・・・・えと・・・・」

「なんだい?」

「行って、らっしゃい・・・・」



はにかむ笑顔がギルバートに送られた。それを嬉しそうに受け取ると、ギルバートは颯爽と部屋を後にした。









□■あとがき■□

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。ごめんなさい。
いやもう、本当に心の底からお詫び申し上げます。こんなのでいいのでしょうか・・・・(びくびく
それ以前の話で、人物像がつかめていないから偽者になってしまいました。。。。。
話も進んでいない・・・
ウハウハ(死語)で書いていたのは事実です。はい。
・・・・・・・・・・・・・・・以上3番手相河もなはでした。

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